流星の色について
2001年11月19日01時47分24秒の大火球の同時観測の写真から本体と永続痕の色と高度を調べました。
発光点(緑色) 105.1km
白の所 101.0km
ピンクの所 96.3km
永続痕の初め 94.9km
痕の青の濃い所 85.3km
爆発点
81.7km
痕の赤の濃い所 79.8km
永続痕の終わり 76.8km
消滅点 73.6km
今回のしし座流星群もカラーで撮影したのですが、それを見ると、すべての流星
が緑色に光り始めて赤で消えているように思えます。宇宙科学研究所の阿部さんが、しし群('99)、おうし群('99)の流星発光各原子の発光高度-相対発光強度の関係図を作成しています。ビデオ(ハイビジョン)分光で、ビデオレイト(1/30
sec)毎にプロットしています。発光高度は、分光-撮像の2点観測が成立したもので計測したものだそうです。これを見ると、光り始めから消滅までのどの範囲でも、圧倒的に酸素の出す光の強度(赤い線)が強いことがわかります。カラーフィルムに記録される光としては、ほとんどすべてがこの酸素の緑色の光で、最後の部分に窒素分子の出す赤い光と考えられるそうです。流星スペクトルの発光高度、発光強度を見る限り、このような写真の色とは一致していないと思われるそうです。恐らく、ある高さでの発光寿命が効いてきているものと思われるそうです。痕(流星発光に比べて寿命が長い発光)ということです。単純に原子の発光寿命は、アインシュタイン係数の逆数なので、酸素原子緑線(557.7nm)の発光寿命〜1秒以外の原子は、マイクロ秒程度で消えてしまうそうです。
各原子のA係数;
Na I @ 589nm(3s-3p)
; 0.62E+00 (10^8/sec)
Mg I @ 518nm(3s.3p-3s.4s) ; 0.35E+00
O I @ 558nm(2s2.2p4-2s2.2p4); 0.13E-07
平均自由行程の長い高空では、発光寿命が長い酸素原子が残りやすい;黄緑。 火球では、CaII(〜396nm)が強く輝く;青紫。 対地速度の速いしし群の場合、ナトリウム原子は比較的高空(110kmくらいか ら)で光り始める;オレンジ。 マグネシウムの強く光る;緑。 しし群の場合、低空では強烈な衝撃波が発生して、励起エネルギーの高い、 窒素分子(ファースト
ポジティブ;600-900nm)が発光する;赤。ということだそうです。温度平衡を仮定して求まる存在比率が、地球大気の存在比率よりも大きく異る場合、流星起源として考えています。特にレアな物質を探している場合、この議論は非常に重要な点です。地球大気起源の物質で、流星発光で多く見られる物質は、酸素原子、窒素原子、窒素分子(first
positive)などだそうです。しし群に限らないのですが、実は、流星本体の発光が主体として写ってるわけではなく、恐らく痕や短痕が写っているのではないかと思います。写り始めの緑色は酸素の禁制線、途中からのオレンジ色はNa。しし群の場合は特に速度が速いので、その傾向は強いと思います。ちなみに、地球大気の観測では、酸素の発光は100km付近、Naの発光は90m付近に極大があります。ですから、光始め(100km付近)は緑色で、途中(90km付近)からオレンジ色に変わるような気がします。